新しい内痔核硬化療法剤「ジオン注」による治療、ならびに治療後の日常生活上の注意点などについてご紹介しています。
日本人の3人に1人は痔で悩んでいるといわれています。
痔には大きく分けて「いぼ痔(痔核)」、「切れ痔(裂肛)」、「あな痔(痔ろう)」に分けられていますが、それぞれ症状は異なります。
いぼ痔:おしりの血行が悪くなり、血管の一部がこぶ状になった状態です 切れ痔:肛門の皮膚が切れたり裂けたりした状態です あな痔:肛門の周りに膿がたまって、外に流れ出るトンネルが出来た状態です |
痔の患者さんの中でもっとも割合が高いのは「いぼ痔(痔核)」です。
いぼ痔はさらに、直腸側にできる「内痔核」と肛門側にできる「外痔核」に分けられます。
本剤は排便時、あるいは普段からイボが出たままになっているような「脱出を伴う内痔核」に対して、切らずに注射による治療を可能にしたお薬です。
*内痔核が大きくなって脱出するようになると肛門側の痔核、つまり外痔核を伴って「内外痔核」という状態になることもあります。
痔核(いぼ痔)はどうしてできる? 肛門周辺の粘膜の下には、血管が集まって肛門を閉じる動きをするクッションのような部分があります。 肛門への負担が重なると、クッションを支える組織(支持組織)が引き伸ばされ、クッション部分が大きくなり、出血をしたり、肛門の外に出たりするようになります。これが痔核(いぼ痔)です。 |
本剤による治療では、有効成分を痔核内に投与することにより痔核を硬化/退縮させます。この方法は、従来より手術適応である「脱出する内痔核」についても効果があり、新たな痔核治療の選択肢の一つとして最近加わりました。
注射療法による治療のため、内痔核を切らずに脱出と出血を治療します。
痔核を切り取る手術と違って痔核の痛みを感じない部分に注射するため、「傷口から出血する」、「傷口が痛む」といった患者さんの身体的・精神的な負担が軽減されます。また、入院期間も短縮でき、社会生活への早期復帰が期待できます。
有効成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸というものです。痔に流れ込む血液の量を減らし、痔を硬くして粘膜に癒着・固定させる作用があります。 硫酸アルミニウムカリウム…出血症状や脱出症状を改善します。 タンニン酸…硫酸アルミニウムカリウムの働きを調節します。 |
本剤は「四段階注射法」という特殊な手法で投与されます。
この治療法は高度な技術を要するため、現在では「当手技に関する講習会を受けた専門医の登録施設」においてのみ治療が実施されています。
また、患者さんの状態によっては本剤が使用できない場合がございます。
受診される際には先生によくご相談ください。
本剤を投与する前に肛門周囲への麻酔か、下半身だけに効く麻酔を行い、肛門周囲の筋肉を緩めて注射しやすくします。麻酔法については先生にご確認ください。 |
本剤を、ひとつの痔核に対して4か所に分割して投与します。 複数の痔核がある場合には、それぞれに投与されます。 |
投与後しばらく点滴を続け、麻酔の影響がなくなるまで安静にします。 |
患部投与後の変化(1週間から1ヶ月) 投与後の早い時期に痔核へ流れ込む血液の量が減り出血が止まります。 脱出の程度も軽くなります。 投与した部分が次第に小さくなり、引き伸ばされていた支持組織が元の位置に癒着・固定して脱出がみられなくなります。 |
治療当日からの経過と望ましくない作用(副作用)の目安です。
入院期間および通院期間は、処置した痔核の数や大きさなども含めて患者さんの状態により異なりますので、治療後も先生とよくご相談ください。
排便はいつから?
仕事復帰は?
本剤による治療後も以前と同じような生活を続けていると、新しい痔ができてしまいます。再び痔にならないためには、おしりに負担のかかる生活を改めることが何よりも大切です。
参考資料
ジオン注による治療を受けられる患者さんへ(監修 岩垂純一)
ジオン注による治療を受けられた患者さんへ(監修 岩垂純一)
おしりSOS ―最新「いぼ痔」の治療法―(監修 辻仲康伸)
おしり元気!? ―人に聞けない悩みを解消しますー(監修 松田保秀)