痔というのは肛門疾患の総称で、そのうち三大疾患が痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)痔瘻、(あな痔)です。
痔核は、三大痔疾患の中で一番多く見られ、排便でいきんだり、下痢で肛門に負担がかかったりすると、粘膜部分を支えている組織が緩み、次第に肛門の静脈が大きくなり、出血したりして肛門の外に出てきます。肛門の内部にできたものを内痔核、肛門の外にできたものを外痔核と呼びます。
内痔核は直腸の最も肛門に近い部分の粘膜が垂れ下がり、イボ状に膨らんだ状態です。外痔核は肛門の皮膚の部分が腫れたもので、通常は手術をしないで腫れはおさまります。
坐薬や軟膏などの外用薬、肛門の血流を促し炎症を抑える内服薬を用います。ただし、内痔核は薬で消失することはないので、症状が再燃することがあります。
痔核の奥の血管をしばって、痔核を切除する方法です。腰椎麻酔(下半身麻酔)で7日~10日の入院が必要です。
創部から大量出血の可能性があるため、退院後も7日~10日間は自宅で休養が必要です。
内痔核に薬を注射して、痔核を硬めて小さくする方法です。手術と違い、切らないので、術後の痛みが少なく、早期の社会復帰が可能です。しかし、外痔核への効果は認められないので、すべての痔核に適応があるわけではありません。
ジオン注を用いた硬化療法を施行できるのは、内痔核治療法研究会が主催する講習に参加し、知識と技術を認められた医師のみとなっています。
裂肛(切れ痔)は便秘などで力むことによって、肛門上皮が裂けてしまう病気です。30代くらいまでの若い方に多く、特に女性がなりやすい疾患です。基本的には便秘を避け、毎日規則正しい排便を心がけてもらうことで、切れないようにすることが大切です。軽いうちは軟膏や坐剤を用いる治療法で良いのですが、何年も切れ痔を繰り返していると、慢性化して切れ痔の周りの肛門上皮がもり上がり、肛門ポリープや皮垂(見張りイボ)が出来てしまいます。また、肛門上皮が引きつれて肛門が狭くなってしまうこともあります。そして、排便の度に裂肛を生じ、悪循環に陥ります。このような場合には手術的な治療法を考えなくてはいけません。
便秘を避け、内服薬や軟膏・坐薬でスムーズな排便を心がける。
慢性化して肛門狭窄を生じた場合には手術が必要です。
手術療法としては側方内括約筋切開術(LSIS)、肛門狭窄形成手術(SSG)などが行われます。
欠点としては両術式ともに肛門を拡げる方法のために、術後の便失禁が数%報告されています。
痔瘻は下痢気味の方や、成人男性がかかりやすい痔の症状です。肛門小窩(肛門にある小さなくぼみ)の感染により肛門や直腸のまわりに肛門周囲膿瘍を形成し、排膿後にトンネル(瘻孔)になる病気です。
このトンネルが残ると感染を繰り返すため手術で切除しなければなりません。
10年以上も経過した痔瘻から癌(痔瘻癌)が発生する恐れがあるため、必ず手術をすることをおすすめします。
麻酔下にて切開排膿を行います。軽い場合は外来で局所麻酔下に切開できますが、複雑痔瘻の場合には入院して腰椎麻酔下に切開が必要になります。
周囲の皮膚とともに瘻孔を切開する方法です。括約筋も切開するので、便失禁を起こす可能性があります。後方(背中寄り)の痔瘻が適応になります。
瘻孔だけをくり抜いて括約筋をできる限り温存し、肛門機能を保つ手術方法。側方の痔瘻に適応があります。
括約筋内の瘻孔にチューブや輪ゴムを通して、時間をかけて瘻孔を開放する方法。上記の術式では括約筋のダメージが大きくなってしまう場合や複雑痔瘻に適応があります。チューブがとれるまでに数週~数ヶ月必要なこともあります。